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題詠2012を完走された方のお歌から5首、選んで鑑賞させていただいています。


今回は砂乃さん。
前から、うたのわでお歌を拝見していました。
母親の視点で詠まれたお歌が印象に残っています。






009程 清廉な良妻賢母に程遠き私はチキンラーメン手に取る


あぁ、あるある、と思う方はたぶん多いとは思う。
妻でもあり母でもあり、まして仕事もあれば、やることが多くて全てにはとても手が回らないし、
適当なところで手を抜くのも仕方ないじゃない、って
次第にあっさりと割り切っていく。
現実によくあるタイプの女性の特徴で、わりとからっとしている性格がうかがえる。
固い印象の漢字が並ぶ上の句と、
「チキンラーメン」という語でより引き伸ばされた印象のある下の句との対比も面白い。


021示 かなしげなマークと誤認してしまう「示(じ)」は「〒(ゆうびん)」に涙二粒


文字を分解して本来の意味とは違うことに気が付く、それは発想の勝負なんだろう。
わたしは自分ではこういうタイプの歌をあまり詠まないが、
作品として接したときに、着眼点の面白さに魅かれるのだ。
上の句の「誤認」という語が示唆的である。
普段だったら気づかない「示」の一語のなかの隠れた悲しさを見つけ出すのは、
見る者もまた孤独なとき、ということだろうか。
上の句で提示したことを下の句で明かしている構造も興味深い。


034聞 月食は月からこぼれた相聞歌 しまいこんでた返歌を探す


次第に欠けていく月の様子を、相手が寂しさを訴える「相聞歌」という発想が面白い。
月食という自然の現象と、ひとの気持ちとがつながっている、という発想はなんだか、
はるか遠い昔の人々のなかにあった発想のようだ。
ほんとうは、もっと前に贈るはずだった歌を贈り損ねてしまっていたのだろうか。
贈る勇気がなかったのかもしれない。意を決して、ようやく贈るであろう返歌。
相手に返歌が届いたとき、きっと月はもう元通りの姿だろう。


036右 ゆっくりと確かめてみる右肺を切り取った後の祖父の溜め息


今回の砂乃さんの題詠のなかで、もっとも印象深かった1首である。
病室での1シーンだろうか。
肺を病んだ、祖父の吐く息の重さ、聞こえる呼吸の真摯さ。
身体の一部を失いながら、生きることは、なお続いていく。
身体から出ていく息、という普段はほとんど意識して聞くことのない音を
改めて聞いていることの重み。
祖父のもらした溜息の音を、いま作者が聞いて受け止めている、その静かさのなかにこそ、
これから続いていく時間の源泉があるのだ。


055きっと 幼さが薄れてにょきっと伸ばされた息子の足のはみ出る炬燵


「きっと」「むしろ」といったお題を、意味そのままではなく、
ほかの単語の一部の音として詠みこんでしまう、という詠み方も面白いなと思った。
育ちざかりの息子の足が、遠慮のない様子で炬燵からはみ出している光景が容易に浮かぶ。
どこにでもある家のなかの光景だけど、改めて思い出すとなんだか、
クスリと笑ってしまう可笑しさがある。冬のある日の、いつもの光景。
母親の視点から切り取った、家族の1枚のスナップ写真のようだ。





今回、選ばせていただいて、改めて家族を詠んだお歌が印象に残りました。
なんでもない日常のなかの一コマ、ちょっとした思い出、
他愛ないいつもの会話・・・・。
もちろん、いろいろと創作は入っているとは思いますが、
毎日の暮らしのなかの光景を歌のなかで再現されているのかな、
と思いました。
読む側もまた、いつか自分の家の中であったことや、周りであったことを
思い出しながら読んでいく、共感する、そんな楽しみがあるのかもしれません。




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2012.12.08 Sat l 題詠2012 鑑賞 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

ありがとうございました。
こんばんは。
たくさんのお歌にご批評なさってみえる姿勢と実力に脱帽です。
また、拙歌にこんなに素敵なご高評をいただけて感激です。
家族の歌はちょっぴり苦味を含んだものが多いのですが、その分自分の詠みたいものを好きに読んじゃってます。
少しコミカルで、でもリアルさをにじませた歌を詠めるように修行中です。

それと「むしろ」「きっと」「ドライ」などは、そのまま音や名詞に変換して別な歌が作れないかと思ってチャレンジしたものです。うまくいかない方が多いのですが。

「示」は、いつも、この字を見るたびに「泣いてるよ、ポスタルくん」(勝手に想像)と妄想していたものを出しました。

へんてこな歌も多く、こんなに丁寧なご批評がいただけて、ほんとに嬉しく思いました。
ありがとうございました。
2012.12.13 Thu l 砂乃. URL l 編集
コメントありがとうございます。
こんにちは。
コメントありがとうございます。

「すこしコミカルで、でもリアルさがある」
そうですね、そんな味わいのお歌が多かったかな、と思います。
読んでいて楽しい、と同時にじんわり、思い出すことがあるという
読後感につながっていくと感じました。

いろんな方のお歌のなかから印象に残るものを選ぶ、という
行為から見えてくることも多いです。
選歌を快諾してくださる方ばかりで、私も楽しく選ばせていただいてます。
今回はありがとうございました。




2012.12.16 Sun l 白亜. URL l 編集

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