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題詠2012を完走された方のお歌から5首、選んで鑑賞させていただいています。

今回は、紗都子さん。
とてもやわらかな感性をお持ちで、うらやましなぁ・・・と思いながら
眺めてきた歌がいくつもあります。





002隣  春隣ねむるあなたの睫毛からこぼれるものをやさしく舐める


「春隣」というと、冬の季語である。冬も終わりに近づき、もうすぐそこまで春がきているころ。
長かった冬の終わりに、眠っている者の眼から零れていくのは、涙だろう。
あるいは、その原因になっている哀しい夢や思い出かもしれない。
静かに眠るひとをそばでそっと見守っている、そんな優しい雰囲気をたたえた歌である。
いちばん最後の語が「拭う」ではなく「舐める」というところが、
相手との距離の近さや関係の深さをうかがわせて、
冬のなかのまどろみの時間の温かさを思わせるのだ。


007驚  驚いて振り向くときのまなざしにスライスされた歪なレモン


一読して、鮮やかな1首だとおもった。ただ、読み解こうとすると難しい。
それは下の句の意味するところがすぐには思い描けなかったから。
言わないほうがいいことを告げてしまったのではないだろうか。
その瞬間、相手の驚いたときのまなざしに見つめられて、歪んでしまったものはなんだろうか。
打ち明けたわたし、ふたりの間の空気、いままでの関係、これからの時間・・・?
わたしが放った言葉のあとの、薄くそがれてしまったゆがんだ時間の亀裂にただただ強く、
レモンの果汁がしみ込んでくるようだ。ひりりとした痛みをかんじてしまう。


015図書  記憶からこぼれていった鳥たちの名に会いたくてかよう図書室


図書室とは、不思議な空間である。
夢中になって読んでいた絵本や図鑑、物語がずっと待っていてくれる、
ゆったりとした場所である。
大人になっていくにつれ時間に追われ、思い出すこともなくなっていく本のなかの世界の断片。
「鳥」はかつてはまなざしの先にいたはずなのに、
その姿や名前を思い出すことさえ少なくなっていく。
図書室に足を踏み入れることで、少しずつ見失っていた断片を
つなぎあわせていくのかもしれない。


046犀  天上に浮かぶ小さなてのひらが金木犀の香を撒いている


初秋のころに強く香る、金木犀。
だれもが覚えのある香りを放つ、小さなオレンジ色の花。
風の様子は目には見えない。けれど、香りを広めていく風の動きを
「小さなてのひら」とした視点が微笑ましい。
ささやかな視点なのだけれど、金木犀のつよい香りを思い出しながら、
せっせと香りを伝えようとするまだ幼い子の手の動きをつい想像してしまうのだ。

086片  片方を失うことのかなしみの一番ちいさいかたちはピアス


2つで、ワンセットのピアス。その片方をなくしてしまっては、もう片方も意味を失う。
「ピアス」というささやかなアクセサリーに託して詠まれた、
とても大切なものを失ってしまったときの痛みを思い出す。
もう戻ってはこないだろうピアスの片方を思って、残った方を見つめるしかないのだ。
掌のなかに残されたピアスの片方は、
取り残された涙の粒みたいな形なんじゃないだろうか。
さらさらと歌を辿っていって、最後に出てくる「ピアス」の一語が
ひんやりとした哀しみの余韻を残す。






紗都子さんのお歌には、ずっとずっと憧れていたので、
今回、選歌をさせていただけて、本当にうれしかったです。

女性らしい、やわらかい感覚や視点を
1首のなかに巧みに閉じ込められていて
これからも、どんなお歌を詠まれていくのか、とても楽しみです。
  


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2012.11.23 Fri l 題詠2012 鑑賞 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

白亜さん、こんにちは。
私の歌を取り上げてくださってありがとうございます。
こんなに丁寧に読んでいただいて感激です。
自分でも、もっと丁寧に取り組まなくては…と改めて思いました。
本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いします♪
2012.11.26 Mon l 紗都子. URL l 編集
コメント、ありがとうございます。
わぁ。コメントありがとうございます!

実は、紗都子さんがまだ、うたのわで詠まれていたころから、
こっそりファンだったのですよ・・・。
なかなか声をかけられず、最近になってようやくお話したり、
選歌をさせてもらえたりして、よかった、と思います。

紗都子さんのお歌って、きれいでふんわりした印象ですが、
歌のなかに芯があって、惹かれるのだと思います。
ほかにも素敵なお歌はあったのですが、
今回は5首ということでけっこう悩んで選びました。
ほんとうにありがとうございました。

これからも、どうぞよろしくお願いします。

v-354
2012.11.29 Thu l 白亜. URL l 編集

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