上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top
題詠2012を完走された方の100首から5首、選ばせていただき
(生意気ながら・・・・)感想も少し加えていきたいと思います。


初回は三沢左右さん。
文語・口語の両方を自在に使って詠まれる、器用な方です。


006時代  君と見しキネマのゲイリー・クーパーの若き微笑を時代と呼ばん

ゲイリー・クーパーといえば、良き時代のアメリカを思わせる俳優である。
まだ映画が人々の大きな娯楽だったころの、見ている側がスクリーンの中に
各々の感覚や感情を託すことがしやすかったころの、象徴のひとりだろう。
「君」「キネマ」「ゲイリー・クーパー」といった、上の句のカ行の音の連なりがなめらかに
下の句につながっていく。そして「時代」という重みのある一語にしっかり託されているのだ。
1首のなかにうまく世界を閉じ込めているな、と思った。


043輝  蝉の背の輝きに似て夏の日の水ぎはの君の踵まばゆし

夏、水際で恋人の足元を見ているのだろう。
「蝉の背の輝きに似て」という表現がどこか切なく美しい。
はかなくて、壊れやすいものを、近くで静かに見ている眼差しを感じさせる。
夏の陽のなかで、きらきらと光る滴、響く笑い声、
淡い思い出がそっと描かれている。


053渋  少女にも似合う渋さがあるという ペットボトルのはじめひと口

左右さんのお歌のなかで、子どもを詠んだ歌がいくつかある。
その中で、もっとも印象に残った歌だ。
「少女」と「渋さ」の組み合わせがまず目に留まった。
その例としてあがったのが「ペットボトルのはじめひと口」というのが
さすがに、よく見ている人なのだろうと思う。
左右さんは絵を描くひとなので、普段からよく周りの人の仕草や表情を見る目が
養われているのではないかな、と思う。
絵を描くとき、歌を詠むとき、なにげない日常のなかにある美しさを
さりげなく写し取る、そんな静かだけど確かな眼差しが感じられる。
ふと立ち止まって、あらためて自分のまわりを見つめなおしてみたくなるような
再発見の楽しさを感じる歌である。


068巨  巨きなる夜のもれ入る真闇にも染まで揺れたる火に鬼哭けり

まず下の句の「火に鬼哭けり」の韻律に魅かれた。
「鬼」の一語はとても強いイメージを持つ語だし、人によってさまざまなイメージを抱くから、
安易に頼らずによく考えて使いたいですね、と左右さんとやりとりしたことがある。
この歌の中の鬼は、火に、そして火の中に何を見たのだろうか。
暗闇のなかで一点、赤々と燃え揺れる火に決して届かない、手に入らないなにかを
見出したのだろうか。
深い闇と、赤く燃える火の鮮やかな色の対比のなかで、鬼の慟哭が
なにやら悲痛なものに聞こえるのである。


081秋  羽をつままれ背を丸め秋アカネ無数に割れた空を見上げる

おそらくは子どもの手で捕らえられてしまっただろう、一匹の秋アカネの視点での歌だ。
昆虫の目線で空を仰いだら、どんなだろう。
まして、捕らえられた直後とあっては・・・・・・・。
今まで飛んでいた空はもはや別の世界となってしまう。
「無数に割れた空」という表現がなんとも無残な印象を残していて
読むものの中に小さな痛みを残すのだ。




美しい歌や発想の面白い歌が多く、選ぶのにはかなり悩みました。
文語では情景の美しいお歌、
口語では発想の面白い、着眼点の鋭いお歌で
左右さんの想像力やイメージの広がりがよくいきているのではないかな、
と感じました。





スポンサーサイト
2012.11.19 Mon l 題詠2012 鑑賞 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

こんにちは。
丁寧に読み取っていただけて嬉しいです。
ありがとうございます。

具体性を持った歌が選ばれていて、おもしろいな、と思いました。
その中で、「鬼哭けり」の一首を選んでくださったのが、興味深かったです。
鬼、確かに扱いの難しい言葉ですよね。
実は、子供を詠むときにも、同じような難しさを感じます。
子供という語の個性に単に寄りかかっただけの歌にはしたくない、と思っています。
そういう意味でも、「鬼」の歌や「子供」の歌に注目してくださったこと、嬉しく思います。

これからも、いろいろな歌に挑戦していきたいところです。
改めて、選歌ありがとうございました。
2012.12.02 Sun l 三沢左右. URL l 編集
コメントありがとうございます。
こんばんは。コメントありがとうございました。

左右さんは大変、幅広くいろんなテーマで詠まれるので、
選歌をするのも、とても楽しかったです^^

左右さんのお歌を見ていて感じるのは、うまく言えませんが、
詠もうとする対象への視点の設定の豊かさ・・・でしょうか。
視点の鋭さとも少し違うかな、と思います。
詠もうとするものに制限を設けないこと、丁寧に見ること、
観察や感動を歌の中に再現することなどに
自分なりの優れた方法があるんだろうな、と思います。

今年の題詠は難しいお題も多く、なかなか大変でしたが
終わったあとには、とても達成感がありましたね。
わたしも、参加できてよかったと思います。
ありがとうございました。

v-273
2012.12.02 Sun l 白亜. URL l 編集

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://hakua2sea.blog.fc2.com/tb.php/109-04940f75
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。