上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top
題詠2012を完走された方のお歌から5首、選んで鑑賞させていただいています。

今回は、飯田彩乃さん。
結社への参加、短歌関連のイベントでの活躍、と
とても積極的でポジティブなイメージのある彩乃さん。
お歌もとても個性的で、読んでいて面白かったです。





005点  知らぬ間に肩の上にいた濁点を夜の空へと放ってやった


肩の上にいるのが「濁点」とは面白い表現だな、と思った。
疲れ、穢れ、ストレス、いろんな内容が浮かぶのだが、
それらをひっくるめて言い表しているようだ。
仕事の帰り道かもしれない。忙しい日中は気づかなかった重みにふと気づくことがある。
勢いよく夜空に重荷を解放してあげたら、きっとまた明日を別の気持ちで迎えられるはず・・・。
都会の空にはだれかが放った濁点がいくつも散らばっているのだろう。
「放ってやった」という勢いのある言い方が1首を救う効果を持っていると思う。


009程  変声期は追ってくるもの音程を踏み外してまた野ばらを歌う


「野ばら」はシューベルトの代表的な歌曲である。
少年たちの美しい歌声のなかに蘇る、野ばらの咲く世界。
けれど、そろそろその美しい歌を歌える季節ともお別れのようである。
成長のあかしでもある変声期。望もうと望むまいと、
大人になるための準備はあらゆる形で確実に迫ってくる。
別れを告げなくてはいけないのは、もう二度と戻ってこない少年期そのものに対してなのだ。
もう少し、あともう少し・・・止まらない時間の流れの中で何度も何度も歌われる曲の切なさ。
「音程を踏み外して」が思春期の不安定で不器用な感じを出していて、また興味深い。


030敗  口づけるほどに頬と頬よせ合って僕らは甘く腐敗してゆく


恋人と過ごすふたりきりの時間は甘く濃密な時間である。
あまい香りに満ちた閉じられた空間で、口づけ、抱き合っているうちに、
しかしなにかが変質していく。
熟れた果実がなにかと触れ合った部分から傷んで腐食していくように、
恋人とは甘い時間をともにしながら、
同時にいつかおこるかもしれない崩壊の危険を共有しているのだ。
愛し合いながら、同時に壊れていくものがある。
恋のなかにある「僕ら」の甘さと危うさが強く出ていて、
1首全体から、香りのつよい香水のような印象があった。


086片  春の水に少しずつ足を差し入れる僕らは永遠(とわ)の片隅にいて


春先の湖か、海辺だろうか。
まだ冬の名残を含んでいるだろう、冷たい水にゆっくりと足をつけてみる。
その冷たさを共有するのは、僕らだけ。僕らのほかにはだれもいない光景がひろがっている。
ひんやりとした空気のなかの静かな儀式のようだ。
「永遠の片隅」という表現がはかなくて、なんだか厳かな雰囲気だと思う。
僕らはいつまでもは、一緒にいられないのかもしれない。
けど、ずっと記憶の中にこの光景は残っていくのかもしれない・・・。
今日の静かな出来事はあくまで、時間の大きな流れの中では片隅であり、
それ故の美しさなのだ。


090舌  舌打ちに転じる前のs音を取り残したまま送信をせり


メールを送信するほんの少し前の瞬間をうまく切り取ったな、と思う。
「s音」という極めて小さなところに着目している。
しかも、「舌打ち」になるはずだった音だから、いらいらした気持ちの残骸といっていいだろう。
相手に対してのイラついた気持ちを、なんとか抑えてのメールだろうか。
ぶつけるわけにもいかない気持ちが送信しおわった作者のまわりにだけ、
ごみ屑のように散らばっている感じがする。
「舌打ち」「s音」「残した」「送信をせり」といったサ行の音の連なりも
どこか乾いた気持ちや関係の表れとして面白い効果を出している。
すでに手元を離れていったメールと、まだ周りに残っている気持ちとの対比が
面白い1首だと思う。







去年の題詠2011で、彩乃さんは完走後に、
多くの方のお歌の鑑賞の記事を投稿しておられました。
そのブログを拝見していて、私も今回は鑑賞までやってみよう、とおもったので
今年の題詠で、今度は彩乃さんのお歌から選歌させていただけることには
なんだか感慨深いものがあります。

女性らしい感覚と、大胆で面白い発想や言い回しがミックスした感じのある
彩乃さんのお歌。
これからもどんどん上達していくんじゃないかなぁ・・・・と
期待しつつ、今後のお歌も楽しみにしたいと思います。



スポンサーサイト
2012.12.16 Sun l 題詠2012 鑑賞 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

白亜さん、こんにちは。
選歌および評をしていただき、どうもありがとうございました! 一首ずつ丁寧に読んで書いていただいたこと、また、昨年のわたしの鑑賞が白亜さんの今年の記事へとつながっていったということを、とてもうれしく思っています。
わたしは今年は完走するのが遅くて、鑑賞までは至りませんでしたが、またいつかチャレンジしようという気持ちになりました。
来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
2012.12.27 Thu l 飯田彩乃. URL l 編集
コメントありがとうございます。
彩乃さん、コメントありがとう。
そう、去年の彩乃さんの鑑賞の記事を読んでいなかったら
今回の題詠は完走したことで満足して、
鑑賞まではしなかったろうと思います。
きっかけをくれて、ありがとうございました。
いろんな方のお歌にふれて、読みとくというのも
すごく面白いですよね ^^
詠むこととはまた違う面白さがあります。

彩乃さんも独特の切り口を持っている方だなぁ、と思います。
面白い100首でした。
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
e-250

2012.12.28 Fri l 白亜. URL l 編集

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://hakua2sea.blog.fc2.com/tb.php/115-82c39687
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。